オオカミ専務との秘めごと
「あ、このワンピかわいい。見て、ほら」
「あ、ほんと。ちょっと寄っていこうか。そろそろ春の服買わないといけないしさ」
私の前を歩いていたOLっぽい子たちは、ウィンドウを眺めたあと連れ立ってデパートの中へ入っていく。
季節が来る前に服を買う。
それが普通のお洒落女子なのかな。
確かに藤色のスプリングコートとピンク色のフレアスカートのワンピは可愛い。
いつも五十パーセントオフとか赤札のセール狙いの私は先取りして服を買ったことがなく、このウィンドウは眺めて通り過ぎるだけ。
そういえば、もうそろそろ冬物のセールを狙う時期かもしれない。
でもそれよりも、今は、肉だ。
今の私には春のお洒落可愛いワンピよりも、冬物セールよりも、食の確保が大事!
今日のお財布の中身は、そのためにある!
デパートに入っていくお洒落女子たちを横目に、スーパーに行くべく、すたすたと駅に向かった。
「うわ、やっぱり混んでる」
思わず呟きが漏れる。
いつものことなれど、スーパーの中は特売品狙いの人たちでいっぱいだ。
会社帰りのビジネスマンもいれば老夫婦もいる。
おばちゃん主婦とか小さな子連れの主婦とかも、この時間帯に多い。
みんなが狙うのは、特売品はもちろんだけど、消費期限を見て店員が貼る半額シールつきのもの。
特売品なうえに半額なのだ、これは狙わずにはいられない。