オオカミ専務との秘めごと

そのため、作りたてを直前に茹でて食べるのが習慣で、ドイツでは「ヴァイスヴルストは12時の音を聞いてはならない」という格言があるほどだ。

皮は固いから、真ん中をナイフで縦に割って中身だけを取り出して食べる。

ホンワカ湯気の立った説明の写真を見ているとお昼が近いせいか、お腹がグーッと鳴る。

ものすごく美味しそうだ。専用のマスタードをつけて食べるらしい。

現段階ではゲルハルトさんと契約には至っていないけれど、好感触を得られた・・・か。


海外取引ならば、二課の仕事だ。

でもオーガニックレストランで販売するなら、一課にも関係があること。

最近長谷部さんが楢崎さんのところによく来るのは、この件に関することかもしれない。

末端の私たちに話がくるのは、契約が本決まりになってからなんだろう。


社内報の記事を読むほどに専務は雲上の人だと感じて、あの日一緒にいたことが夢の中の出来事に思えてしまう。

が、油断大敵!マッチ一本火事の元!

フロアから出るときは、一秒たりとも気が抜けない。


『専務は毎朝定時に出社されるって。帰りは仕事の都合によってバラバラみたい』


佐奈の情報によると、“専務注意報”が解除される時間帯はほぼ皆無なんだから。


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