オオカミ専務との秘めごと
午後になると、集計作業の済んだ私は少し手待ち状態になる。
逆に午前中に席を開けていた佐奈はすごく忙しそうで、チャイムが鳴る前から仕事を開始していた。
「うわ、大変。メールがすごく溜まってる」
佐奈のうんざりした声を聞いて心の中でエールを送る。
いつもの佐奈は余裕な感じで仕事をしていて、反対に私は必死で仕事をこなしている。
それは多少の仕事量の差もあるけれど、一番の原因は私が残業をできないから。
一生懸命に仕事をしてはいるものの、ほぼ毎日定時帰りの私は、女子社員たちに陰口を言われているのを知っている。
「神崎さんだけ、仕事が楽」とか、「大した仕事を任されていない」とか、そんな類のこと。
残業する子たちを尻目に帰る私を見てヒソヒソ話しているのを見たことがあるし、実際「言われてるよ」って、佐奈に教えてもらったこともある。
佐奈は隣で私の仕事の仕方を見ているから、部内の女子の中では唯一の味方だ。
姉御肌で美人な佐奈だけど、彼女も女子社員から攻撃対象になることがある。
原因は長谷部さん。
独身女子の間では人気抜群の彼にしょっちゅう迫られているから、一部の子たちに睨まれているのだ。
そんなこと、彼女は全く意に介していないけれど。