オオカミ専務との秘めごと
所々に観葉植物が置かれた綺麗な一階ホール。
そのほぼ真ん中あたりに、『(株)オオガミフーズ』の銀色ロゴが貼られた白い壁がある。
そのそばにある受付スペースに塩田さんがいた。
エレベーターを降りた私に気づいて、にっこり笑ってくれる。
噂通りえくぼが可愛くて癒される笑顔だ。
「佐奈さんに頼まれた郵便物を取りに来られたんですよね?」
そう言いながら、塩田さんはカウンターの下から郵便物の束を取り出した。
「これ全部営業部宛てのものなんですけど・・・あ、そっか、二課宛てのと分けた方がいいですよね」
急いでいるからいいですと断る暇もなく、塩田さんは輪ゴムをほどいて郵便物を取り分け始めた。
「本来、係りである私が届けるべきなのに、わざわざすみません」
恐縮しながらも塩田さんは手慣れた様子でさくさくと二つの山を作っていく。
そのうちの一つを私に渡してくれた。
お礼を言ってカウンターから離れようとしたら、塩田さんがパッと私の腕を掴んだ。
「へ?」
「神崎さん、少し待ってください」
そう言って彼女は、私に向けていたえくぼの笑顔をエントランス側に向けた。
「え?何?」
釣られてそちらを向いた私の目に飛び込んできたのは、開いた自動ドアから入ってくる、まとめ髪がきりっとした女子社員とパリッとしたスーツ姿が麗しい男性。
男性は背が高くて姿勢が良く、サラサラな髪に綺麗な二重の目──。