オオカミ専務との秘めごと


電話が鳴り、佐奈が素早く受話器を取って応対する。

それを機会にし、意を決して納品書の束を持って竹下さんのデスクに向かう。

彼女のデスクは業務の関係上、営業部の中央付近に置かれたFAXに近い場所にあり、入り口近くに位置する私と佐奈のデスクからは死角になる位置にある。

近づいていくと、ひそひそ話す声とくすくす笑う声が聞こえてきた。

さらに近づくと、竹下さんが隣の子と話をしているのが見えた。


「そうでしょー、どーんと、ぜーんぶ、彼女のデスクに持っていけばいいわー」


そう言って、クスクスクスと隣の子と笑いあっている。

彼女っていうのは、もしや私のことだろうか・・・。


竹下さんに呼びかけると、ビクッと体を揺らしてこちらを向いた。

少し口がもぐもぐと動いていて、それを慌てて手で隠す。

クッキーの小袋がデスクに散らばっているのを見ると、お茶タイムをしていたようだ。

お茶タイムなんて、一日の仕事の中にはないけれど。


「なーに?あんな簡単なことなのに、もしかして分からないことがあったの?やーっっっっっぱり、仕事のできない人なのねー」


お気の毒だわーと眉を歪めた表情を作り、斜め下から私を見上げる。


「書類整理なら終わっています」

「え、もう!?ちゃーんと、分けてくれたのー?」

「はい。分類して、インデックスも付けてあります」


作業の結果を報告すると、あからさまに動揺した表情をした。


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