隣の部屋と格差社会。
「銭湯、よく来るんですか?」
「まあまあ。」
タオルや着替えが入っていると思われるビニール袋を肩に引っ掛けた佐渡さんはすたすたと来た道を歩く。
「佐渡さんって生活力ありますよね。」
それは、入居して佐渡さんがお隣さんだと分かったその日から思っていたこと。
何を聞いても答えてくれる佐渡さんは、例えば無人島に行ったって立派な生活を送れるんじゃないかな。
佐渡さんは、『まあ、お嬢様に比べればな』と少し意地悪な前置きをして衝撃の事実を教えてくれる。
「強いて言えば7人兄妹の長男だからかな。」
「7人?!」
「ああ、じいさんばあさん入れて11人家族だ。お袋はかなりの節約家で、金持ちとは縁遠い生活だった。」
11人?!すごい!
今まで、私の周りにはそんな大家族を持つ人なんて居なかった。
姉妹が3人居た、高校時代の友達 加奈ちゃんの記録を悠々と超えた。
11人か…。3人家族の私には、その生活ぶりは想像出来ないな。
「へえ、すごく楽しそうですね!」
一人っ子だった私は、よく母に弟妹を迫ったものだ。
そんな憧れの兄妹が、佐渡さんには6人も居るのか。いいな。
そんな思いでそう言うと、佐渡さんは私の反応を物珍しそうに見ていた。