あの春、君と出逢ったこと



私、ツいてるのかな⁇



初めての学校で、初めての体育がバスケだなんてツいてるとしか思えないよ。





『行くわよ』



立ち上がり、私を見ながら翠がそう言う。



『え? もう?』


『そうよ。ここ、お昼休みはないんだから』



……お昼休みないんだ…。


じゃあ、食べた後に運動⁉︎


それ、けっこう大変なんじゃ……。





『1年生なんだから仕方ないのよ』


私の考えを読み取ったのか、翠が溜息をつきながらそう言った。



……そんなもんなんだ。



『分かった。

て、ちょっと、待ってよ‼︎』



いつの間にか、私を置いて教室から出ようとする翠を追う。



『あ! 栞莉チャン!』




翠に追いつき、出ようとしたタイミングで、快斗君が私を呼び止める。




『何?』


『翠と、仲良くな!』



振り返った私にそう言って、ニカッと白い歯を見せながら笑う快斗君。



『当たり前‼︎』


そんな快斗君に右手でガッツポーズを作り、笑い返す。



『栞莉⁇ 本当に置いて行くわよ』



少し前の方で、立ち止まっている私の方を向きながら翠がそう言う。


『ごめんごめん』



そんな翠に駆け寄って、隣に並ぶ。




『翠は、煌君と快斗君と仲良いの?』



体育着の入ったカバンを前後に振りながら、気になっていたことを聞いてみる。




『私、煌とは兄弟よ?』




『そう言われればそう言ってたような……』



翠の言葉にハッとして頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。




『栞莉って、意外と馬鹿よね』



そんな私を目をそ細めながら見る翠から、たまらず視線を横に逸らす。





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