あの春、君と出逢ったこと



そんな私を見て図星と受け取ったのか、翠が続ける。


『私と煌は、快斗と幼馴染なのよ』



『幼馴染?』


『ええ』



幼馴染と言った翠の顔が一瞬曇った気がして、翠の顔をジッと見る。




『翠?』


『……何でもないわよ』




私が翠に声をかけると、私の視線に気づいたのか元に戻る翠。




『そっか。

……ね、翠』



『何?』



『体育館、遠くない?』



いつまでたってもつかない事に、首をかしげながら翠に尋ねる。




『……そうね』



そう言いながら私から変に視線を逸らした翠。




『……迷ったとか、ないよね?』



私の言葉に、翠がピクリと肩を揺らす。


……え?



『み、翠……⁇』



『……だ、大丈夫よ』



私の言葉に答えながら、自分に言い聞かせるように言う翠。


……迷ったんだね。




『ここ、どこだろう⁇』




辺りを見渡し、現在地を知る手がかりを探す。




けれど、来たばかりの私に、ここがどこかわかるはずもなく。




『……栞莉、多分、大丈夫よ』



引きつった笑みを浮かべる翠に、不安を覚えた時だった。



『翠チャンと栞莉チャン⁇

忘れ物でもした?』


聞き覚えのある声が聞こえ、後ろを振り返る。




『快斗君‼︎』



案の定、想像した人がそこにいて、ホッと安心する。




『何でまだここに居るんだよ』



快斗君の隣にいた煌君の言葉を聞いて、翠が顔を逸らす。




『はっはー。

さては、翠チャン、迷ったんだな?』




快斗君の言葉に、図星を表すかのように肩を揺らす翠。





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