あの春、君と出逢ったこと



『……またか』



そう言いながら、煌君が呆れたようにため息をつく。



『悪かったわね、方向音痴で』




そんな煌君に、余計に拗ねていく翠。



『翠チャン、栞莉チャン、俺らも次体育だから、一緒行こうぜ!』


『……良いの?』




遠慮気味に聞いた私に、ニカッと笑いながら親指を立てる快斗君を、煌君が驚いた顔でみる。




『次、俺らも体育だったか?』


『そうだけど? てか、煌‼︎ お前、体育着持ってこいよ』



煌君の言葉にそう言った快斗君が、呆れたように教室を指す。



『……ああ』



焦った声色でそう言った煌君は、快斗君の指した教室の中に入っていく。




『……え?』



『栞莉チャン⁇ どうかしたのか?』


私の疑問を呟く言葉に反応した快斗君が、私の方に視線をむけながらそう言う。



『煌君、今、あの教室入ったよね?』



『入ったな』




恐る恐る、という表現が似合うくらいゆっくりと聞く私に、即答で頷いた快斗君。


『あれ、私達の教室なの?』



『そうだぜ?』



……じゃあ、巡り巡って戻って来たってことだよね?



『翠、方向音痴なんだね』



改めて分かった事実を口にする。


『……悪かったわね』




そんな私をの言葉に口を尖らせる翠を見て、苦笑する。



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