あの春、君と出逢ったこと
『快斗。男子も体育館なのかしら?』
気を取り直したのか、快斗君の方を向いて、翠がそう聞く。
それは、私も気になった。
男子が隣でやるとか、あるのかな?
『そーそ! バスケすんの!』
元気よくそう言う快斗君に、翠が顔を歪める。
『男子が隣なのね……』
心底嫌そうにそう呟く翠を見て、ニヤニヤと笑う快斗君。
『俺のカッコ良いところ見れるかもしれないんだぜ⁉︎』
『そんなわけないでしょう? 自意識過剰も程々にしなさいよ』
自信満々にそう言った快斗君を、冷めた目で見ながら即答で答える翠。
そんな2人の間に明らかな温度差が生まれているのを感じて、未だ戻ってこない煌君が、早く戻ってくることを心の中で願う。
『待たせて悪かったな』
『煌君……‼︎』
そんな私の願いが通じたのか、良いタイミングで戻ってきた煌君を、笑顔で迎える。
『……どうかしたのか?』
笑顔で迎えた私を不思議に思ったのか、そう聞いてくる煌君に、後ろの2人を指す。
『……ああ、あの2人はいつもああなんだよ。
気にするな、栞莉』
私の指す方に視線を向けた煌君が、呆れたように笑いながらそう言う。
『……そんなもの、なの?』
『ああ。
それより、あの2人を待っていたら遅れるぞ?』
煌君が2人に視線を向けながら私にそう言う。
……流石に、初めての体育で遅刻したら、イメージ悪くなるよね?
『置いていくか』
2人をそのままにして良いのか迷っている私に気づいたのか、煌君が私の手を引きながらそう言って口角を上げる。