あの春、君と出逢ったこと
そう高らかと宣言した先生に、至る所からヤジが飛ぶ。
特に、女子生徒から。
『私達が、男子とバスケをするって事ですか?』
『そうだ。良いだろ?
いつもと違って、また楽しいはずだ』
そう言ってガハガハと笑う先生を、女子たちが冷めた目で見つめる。
……それも、そうだよね。
女子からしてみれば、男子と体育、それもバスケなんて、恐怖以外の何物でもないし。
『山ちゃーん』
皆が呆れ、ため息をつきながら山先生を批判てきな目で見る。
そんな時、体育館内にゆるい声が響き、皆、山先生からその方向に視線を移す。
『佐藤、お前、遅刻だぞ』
山先生は、山ちゃん呼びした声の主……快斗君に向かってそう言う。
その言葉に、気づかないうちに鐘がなっていたことに気づく。
『それよりもさ、山ちゃん。
俺、それ反対!
だって、本気出せなくなるし?』
いつも通りの緩さでそう言った快斗君に、皆の期待のこもった視線が集中していく。
『……またやってるわよ、快斗』
同じように注目していた私の隣から、翠の声が聞こえ、慌てて隣を見る。
私の隣にいた翠は、平然とすました顔を浮かべ、何事もなかったかのように私に向かって笑いかける。
『い、いつの間に……⁇』
『快斗が声をかけた時にはいたわよ?
それより、私を置いていったわね? 栞莉』
それより。と、話題を変えた翠が、私に向かって不敵な笑みを浮かべる。
その笑みを見て、思わず翠から2、3歩後ずさっていく。