あの春、君と出逢ったこと
『どうして後ずさるのかしらね?』
そう言いながら私に近寄ってくる翠から、1歩、また1歩後ずさる。
『……いやっ、何でもなっ……』
引きつった笑みを浮かべる私とは対照的に、満面の笑みで私に近づく翠。
『それもそうだな。
じゃあ、佐藤の意見を通して、女子男子分かれて、バスケをしよう』
私達がそんな状況にあるとは知らず、大声でそういった先生に、皆が声を上げて喜ぶ。
……先生ッ、ナイスタイミング‼︎
『……まぁいいわ。
チーム組みましょう? 栞莉』
切り替えが早いのか何なのか。
私の方を見て笑う翠に、安堵して頷く。
『え? でも、バスケって5人じゃ……』
『この学校は基本2on2なのよ。
女子は2本先取』
腰に手を当て、呆れたように山先生を見る翠を見て、苦笑いを浮かべる。
……2on2か。
『……翠はいいの? 私と組んで』
『良いのよ。
このクラス、ちょうど1人余っちゃうのよ。
3人のグループができるんだから逆に、組んでくれて良かったわ』
そう言いながら、翠が私を見て笑う。
『それはこっちのセリフだよ!
ありがとね、翠!』
そんな翠に私も笑みで返す。
辺りを見渡してみると、クラスの子しか知らない私にとって、知らない人が大勢いる状況。
元々、人数の少ない高校で、1学年1クラス25人の3クラスしかないらしいけど。
あ、私が来たから、私のクラスだけ26人になるのかな?