あの春、君と出逢ったこと
『待てよ、そのチーム、反則だろ!』
隣のコートからそんな声が聞こえて、声のした方に視線を向ける。
『別に良いだろー⁇ 俺は煌と組むの!』
『佐藤と朝倉が組んだら、勝てるわけねぇじゃん!』
そんな言い争いをする集団の中心には、煌君の肩に腕を回す快斗君と、呆れたような表情でその会話を聞く煌君。
周りの男子は、この2人が組むことに反対らしく、ものすごく抗議している。
『佐藤君と朝倉君が組むんだって!』
『本当⁉︎ 』
男子の言葉を聞いて、周りの女子達もザワザワと騒ぎ始める。
『……翠、あの2人って人気なんだ?』
『そうね……。
まぁ、顔だけは良いから』
私の言葉に苦笑いを浮かべて、騒ぎ立てる女子達を見て溜息をつく翠。
確かに2人ともカッコ良いしね……。
快斗君は高身長で、明るい茶髪の髪に、程よく焼けた肌。
煌君は、快斗君ほど高くはないけど、高身長で、黒髪に、あまり焼けていない肌。
スポーツマンの快斗君と、中性的な顔立ちの煌君は、確かに女子から人気でもおかしくはないよね。
2人のことを考えて、チラリと盗み見た翠は、煌君そっくりで中性的な顔立ちに、黒髪ロングの艶のある髪、白い肌。
『何、人の顔チラチラ見てるのよ、栞莉』
そんな私の視線に気づいた翠が、不思議そうに私を見る。
『なんでもないよ。
それより、対戦ってどうなるの?』
まさか総当たりってわけにもいかないだろうし。
『チームはクジで決める!
代表はさっさとクジを取りに来い‼︎‼︎』
『だ、そうよ』