あの春、君と出逢ったこと
私の声が聞こえたのか疑問に思うくらい、良いタイミングで、山先生がそう言う。
『……面倒』
声をはりあげる山先生を見て、ため息をつく翠に代わり、私が代表でクジを引きに行く。
くじ引きを引いて、自分たちの番号を確認するため、自分の手の中にある、6番と書かれた紙を見る。
『栞莉、誰と当たった⁇』
そんな私を見て、私の引いたクジを見る事なく、隣でそう言う翠に慌てて対戦相手を確認する。
6番ってことは、5番の人とって事だよね⁇
対戦表の5番の下にか書かれている名前を、翠に聞こえるように読む。
『え、と……長瀬さんと緑山さん……⁇』
そういった私に、翠が額に手を当てながらため息をこぼす。
『……翠?』
『栞莉、あなた、凄い貧乏くじを引いたわね』
心底嫌そうにそう言った翠に、私は首をかしげて見せる。
意味がわからないよ?
何が貧乏くじなんだろう……⁇
そんな私の疑問を表情で感じ取ったのか、ビシッと人差し指を立てながら翠が私に顔を近づけてくる。
『いい? 長瀬と緑山は、小中からそのままバスケに上がってきた2人なのよ』
小中から?
って事は……バスケ歴9年って事⁉︎
『そ、それは確かに貧乏くじかも……』
そんな事を口にしながら引きつった笑みを浮かべる私に、同意するように、翠が大きく頷いた。
『ま、まぁ! 私、バスケは本当にできるから‼︎
何とかなるよ!』
翠を安心させるために満面の笑みで笑いかける。
そんな私を見て、ポジティブね。と笑いながら、翠が私の頬をつねる。
『いひゃいよ!?』
『良いじゃない、べつに』