あの春、君と出逢ったこと
1日でこうも頬をつねられる私って何⁉︎
それにしても、本当に煌君と翠は仕草とか笑い方とかがソックリ。
顔もそっくりなんだけどね⁇
『くだらない事考えてるなら、そのまま思いっきり横に引っ張るわよ?』
満面の笑みを浮かべているのに、なぜか怖く感じる翠を見て、(そんな滅相もない) という気持ちを込めながら、思いっきり頭を横に振る。
『……冗談よ』
笑をこらえているのか、肩を震わせながらそう言った翠を見て、痛む頬をさする。
私の頬って、つねりやすいのかな?
そう思って、試しに自分で思いっきり頬をつねってみる。
『……痛いだけだ』
案の定、ヒリヒリする痛みが襲い、慌てて頰から手を離す。
『……何してんだよ、お前』
その直後、後ろから声をかけられ、後ろを振り返る。
『あ、煌君』
『俺もいるよー!』
私が煌君と呼ぶと、煌君の後ろからヒョコッと快斗君がウィンクしながら出てくる。
『快斗君まで! でも、ここ、女子のコートじゃないの?』
そう言って首をかしげる私の頭に、煌君肘をのっける。
『ちょ、煌君⁉︎ わたし、ひじおきじゃないんですけど?』
『悪りぃ。丁度いい身長だったからな』
そう言って意地悪く笑う煌君の足を、思いっきり踏みつける。
一応、言っとくけど。
私の身長は至って平均の156だから‼︎
私が低いんじゃなくて、煌君が大きいだけ!
『……痛え』
足を押さえて痛がる煌君を上から見おろして、鼻で笑う。
『仕返し』
そんな私の挑発に、煌君が降格を少し上げてニヤリと笑う。
『覚えてろよ、栞莉』
『絶対嫌だね!』
煌君の言葉に舌を出して反抗する。
『……珍しい事するのね、煌』
そして、そんな私達の言い合いを、本当に珍しそうに観戦する翠と快斗君を盾に、後ろに逃げ込む。
『……煩えよ』