あの春、君と出逢ったこと
後ろに隠れたわたしを見て、ニヤリと笑いながらからかうように言った翠に、煌君が不貞腐れながら返事する。
『それで、どうして女子のコートに居るの?』
……さっき、何気に無視されちゃったからね。
さり気無く、同じ質問をしてみる。
『さっき言わなかったっけ、俺』
私の言葉に、首の後ろをかきながらそう言う快斗君に頷く。
言っていたとしても、少なくとも私は聞いてないし!
『栞莉チャン達、3試合目だろ?
その見学』
語尾に音符がつきそうな勢いでそう言った快斗君に、首をかしげる。
『見ても面白く無いと思うよ⁇』
『いーや! 皆、栞莉チャンに興味津々だぜ?
どれくらいバスケできるのか楽しみだしな!』
私の反論を見事に跳ね返し、ニッと笑った快斗君の言葉を聞いて、周りに視線を移す。
『……なんでこんなにギャラリーが居るのっ』
周りには、快斗君が言った通り、興味津々の表情を浮かべた皆がコートを取り囲んでいた。
『期待されてんな、夏川‼︎』
そんな周りを見渡し、戸惑う私の背中を、大声でそう叫びながらバシバシと叩く山先生。
『期待なんて良いです!』
先生の手から逃れながら、大声で反論する。
期待されて、それこそ、期待はずれだったらと思うと、顔が青ざめていくよ⁇
『次!
第3試合目夏川・朝倉vs.緑山・長瀬!!!』
私の近くで先生が叫ぼうとする前に、なんとか両手で耳を塞ぎ、普通よりも少し大きいだけの声という被害で済む。