あの春、君と出逢ったこと
『……行くわよ、翠』
そんな山先生にウンザリしたのか、早足にコート内に向かう翠を小走りで追いかける。
『あんたが有名な夏川?』
『口が悪いですよ、秋』
ビシッと私を指差しながらそう言った女の子を、もう1人の女の子がたしなめる。
『……チッ…
私は緑山秋。
バスケするからには、容赦しないから』
ザバザバ系女子であろう秋ちゃんは、そう言って私達から視線をそらす。
『……ごめんね、秋が。
私は長瀬春。
よろしくね?』
……春さんは、どうやら秋さんのお母さん的存在の親友らしい。
『私は夏川栞莉です!』
『……朝倉翠』
元気良く答えた私とは裏腹に、やる気がなさそうな声で答える翠。
『朝倉、あんなには負けないからな!』
そう言った秋さんがギロリと翠を睨みつけるが、睨まれている当の本人の翠は、何食わぬ顔で、長い黒髪を結んでいた。
……え? この状況、何?!
睨んでいるけど、秋さんほおっておいても良いのかな?
翠は気にしてないみたいだけど、私が気になる。
『余計な事、しない方が栞莉のためよ⁇』
睨んでいる秋さんに声をかけようとした瞬間、髪を結んでいるため、下を向いているハズの翠がそう言う。
……どうやってみてたんだろう。
そんな疑問を感じながらも、翠が怖くなり、秋さんから少し距離をとる。
『お前ら、準備はいいか?』