あの春、君と出逢ったこと
『必要ない』
そんな快斗君を無視して、私を見てそういった煌君に、頷いてみせる。
実際、見せるつもりなんてないけど。
『たく……。
まぁ、いい調子ではあるって事よね?』
『そりゃあ、そうだろうな!』
そう言いながら目を見合わせて笑う翠と快斗君を見て、首をかしげる。
そんな私を見て、煌君は、気にするなと笑い、少し焦り気味で翠と快斗君を何処かに連れて行った。
……気にするなと言われても。
あんな煌君初めて見たし、気になるものは気になる。
そんな私の考えなんて知らず、二人を引きずりながら戻ってきた煌君は、無表情にさらに不機嫌さをプラスした表情で椅子に座る。
そんな煌君をチラッと見て、慌てて視線を窓の外にそらす。
翠と快斗君……。
一体、なにしたの?!
結局何が何だかわからないまま、午後の授業も終わり、あっという間に放課後になっていった。
『煌君』
先に帰る準備を終わらせた私が、まだ隣でゴソゴソやっている煌君を呼ぶと、煌君は顔だけ向けて答える。
『今日、行くよね?
ドーナツ屋』
笑いながらそういうと、チラッと何処かに視線を向けた煌君は、すぐに私の方に視線を戻して頷く。
一瞬だけ視線を向けた先が気になり、その方向を見てみると、翠と快斗君が、少し離れた方から私たちを見てニヤついていた。
『栞莉。私、快斗と帰るから、煌と帰ってくれるかしら?』
私が見たことに気づいた翠が、煌君を指してそう言う。
……翠は快斗君と帰るんだ。
『分かったー。
翠、楽しんでね!』