あの春、君と出逢ったこと
『それは褒め言葉ですか?』
『さぁ……⁇ どうだろうな』
目を細めて煌君に抗議した私に、未だ笑みを浮かべた煌君が挑発を含めた声色でそう言う。
そんな煌君に文句を言う私を無視しながらも、歩幅を合わせてくれる煌君に、思わず笑みを浮かべる。
『なんだよ?』
イキナリ笑った私を不思議に思ったのか、眉間にしわを寄せて私を覗き込んだ煌君。
そんな煌君から、慌てて無表情を浮かべて目を逸らす。
何も言わず、駅に向かって歩く私を歩道側から遠ざけて歩いているのは、煌君なりの気遣いなのか、無意識なのかわからないけど。
普通、女の子がされたらトキめいちゃうよね?
そんな事を考えながらも、煌君と会話をする話題が無くなり、私達の間に沈黙が流れる。
……この沈黙は、嫌いじゃない。
一人の時間は落ち着くから好きだけど、この雰囲気も、似たような感じがする。
『……栞莉は、甘党だったよな?』
沈黙を破ったのは意外にも煌君で、私に向けられた質問に笑ってうなずき返す。
『私は好きだよ、甘いの。
煌君も好きなの?』
私の質問に答えずらそうに曖昧に頷いた煌君は、多分甘党なのを知られたくないんだろうな、なんて考える。
『1番好きなのは?』
煌君の質問に少し考えて口を開く。
『特に、ドーナツが好きかな。
いろんな種類があるじゃん?
全部好き』
そう言って笑うと、何故か煌君が手の甲で口元を覆い隠す。
……ん?
これって、煌君が照れた時にするクセじゃ?
今、照れるところ無かったよね⁇