あの春、君と出逢ったこと
『……手?』
『手!』
未だに困惑しながら私の手を見つめる煌君に痺れを切らし、地面についたままの煌君の手を掴んで強引に引っ張る。
イキナリのことだったからか、驚きの声をあげながら煌君が立ち上がった。
『ドーナツ屋もうすぐ着くよー。
お腹すいた!』
立ち上がったまま、まだ固まっている煌君の背中を後ろから押しながら、煌君に向かってそう言う。
『……弁当、食べたばっかだろ』
やっと正気を取り戻したのか、私の言葉にそう突っ込んできた煌君に、背中から顔を覗かせて頬を膨らます。
仕方ないじゃん。
ご飯は食べてもお腹は空くしね?
『……リスかよ』
頬を膨らませたままの私を見て、ボソリと煌君がそう言ったのが聞こえたかと思うと、煌君の人さし指が、私のほおまで伸びてきて。
『ぶふっ……‼︎』
思いっきり、頬を突き刺した。
そのせいで思いっきり口から空気が抜けてしまった。
『何するの!』
びっくりしたじゃん‼︎ と付け加えて煌君を見る。
私の言葉に返事はせず、口角を少しだけあげた煌君が、目の前に見えている駅に向かって歩いていく。
『……て‼︎ 置いてかないでよ』
先に歩いていく煌君にそう声をかけて、小走りで追いつき隣に並ぶ。
ドーナツ、楽しみだったんだよね。
海外から日本に上陸するのは初のお店がこんな所に出来るなんて、本当ついてる!
『ドーナツ屋発見‼︎』
ふざけて煌君に敬礼をする真似をすると、少し私から距離を置いた煌君。
『そんな引かなくてもいいじゃん‼︎』