あの春、君と出逢ったこと
『見て、煌君‼︎ 凄いたくさんある!』
目の前に並ぶドーナツを見て目を輝かせながら言った私の隣にきた煌君に、色んなドーナツを指して見せる。
『コレ美味しそう……ッ!
あ、あれも!』
ぐるぐる回りながら迷う私の隣で、煌君が私の指したドーナツをどんどんトレイに入れていく。
『え!?』
それを見て驚く私なんて無視して、煌君はすました顔で会計に向かった。
……え?
今、私が指したドーナツ全部トレイに入れてたよね⁇
それに、会計に行ったってことは、私の選んだドーナツだけを買うつもりって事だよね?
『煌君、私が払うよ!』
慌てて会計にいる煌君の隣からお金を出すも、すでに袋詰めされた後のドーナツが目に入る。
『これ、いくらだった?
私払うから』
財布を探りながら言った私の言葉を無視した煌君は、近くの椅子に座った。
『……食べないのか?』
その中の1つを手に取り口に運びながら、立ちっぱなしの私に不思議そうな視線を向けて、煌君がそう言った。
……え?
何でこう……普通なの?
こんな量のドーナツ、流石の男子でも奢ろうだなんて思わないと思うんだけど……。
『煌君、私、お金払うよ』
煌君の目の前の椅子に腰掛けて、煌君にお金を出しながらそう言う。
『いらない。
俺も食べたかったし、この種類』
そんな私を言葉1つではねのけて、ドーナツを頬張る煌君を、じっと見つめる。
『……何』
そんな私の視線に気づいた煌君が、眉間にしわを寄せ、食べている手を止めてそう聞いてくる。