あの春、君と出逢ったこと



『煌君、離して?』



パニック気味の頭を落ち着かせて、抑揚を抑えた声でそう言った私に、嫌だとでも言うかのように掴む手の力を強める煌君。



…… 煌君って、風邪ひいたらこうなるの?



『……離したら、離れるだろ。お前』



固まったままの私にそう言った煌君は、声を少し掠らせる。




まぁ、確かに離れるけど。

離れなかったら、着替えできないし薬も飲めないしね?



『煌君。

薬飲んで。あと、着替えも』




そう言って逃れようとした私を見て、煌君が眉間にしわを寄せる。



……何か、不機嫌になってない⁉︎


私、悪い事なんてしてませんよ?




『……嫌だ』



やっぱり、どこか不機嫌な声色でそう言った煌君に首を傾げる。

そんな私を見て、余計に機嫌を悪くしたのか、何を思ったか。


グッと掴んでいる手ごと、私を自分の方に強く引寄せた煌君のせいで、煌君の胸板に顔をぶつける。


痛いっ……じゃなくて‼︎




今、自分に起こっている状況を確認しようと、1人パニックを起こす。


目を閉じて、開いて初めに見えるのは暗闇で。


後頭部に腕を回され、抱きしめられている事を知る。



『なっ……え、あ、煌君⁉︎』



思わず、勢いよく顔をあげた私の視線が、私を見下ろしていた煌君の視線と交わりあう。




『……お前、暖かいな』





風邪のせいなのか。
いつもよりも、崩れた笑みを浮かべる煌君に、自分の顔が紅潮していくのを感じる。



……っ…‼︎



そんな笑み、見せないでほしい。




風邪のせいだってわかってるけど、何か勘違いしてしまいそうだ。




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