あの春、君と出逢ったこと
『……もう少し、このまま』
私の肩に顔を乗せたまま話す煌君の声が耳元で聞こえて、思わず背筋を震わせる。
『……ん』
『……サンキュ』
思わず肯定の返事をしてしまった私に、顔を動かさないまま、煌君がそう言った。
サンキュ……ね。
まぁ、煌君にお礼を言われるのも……悪くない、かな?
いつも悪口ばっかりで褒めてくれないし。
優しい事はたま〜にしてくれるけど、それ以外は本当っに意地悪だし。
いつの間にか、寝息を立てている煌君の髪の毛に指を通しながら、口角を上げる。
偶にはこんなのも、悪くないかも、な。
『あ……薬、飲まし忘れたや』
煌君の髪を指先で弄びながら呟いた私の言葉は、暗い、煌君の部屋に少し響いて消えていく。
もう、良いよね?
また起こすのはかわいそうだし、私も眠くなってきたし……。
ベッドに腰掛けていた私の体が横に倒れたのと同時に、煌君が私の隣に倒れる。
横になったまま、翠達への言い訳を適当に考えながら、瞼を下ろしていく。
睡魔にはかなわないって。
隣で眠る煌君の寝顔を最後に視界に移し、私もそのままの無理に落ちていった。
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