あの春、君と出逢ったこと
kou_side
いつもは広く感じるはずのベッドで、寝返りを打てずにゴロゴロと左右に揺れる。
……何だよ、俺。
いきなり成長期が来たわけでもあるまいし。
あのバカみたいに1人では大きいベッドで寝返りが打てないなんて、誰かがいるに決まっている。
未だ少し朦朧とする意識の中、そう考えてうっすらと瞼を開ける。
瞼を開けた先に見えたのは、少し開いている扉。
その扉のせいで少し差し込んだ光で照らされている……栞莉。
『……ん?』
もう一度、目を擦ってベッドの上を見る。
しかし、何度見返しても、俺のベッドの上で栞莉が寝ているようにしか見えなかった。
……少し冷静になれ、俺。
栞莉を起こさないように静かにベッドから立ち上がり、落ち着くために深呼吸をする。
もう1度目を向けた先に、やはり存在する栞莉を見て、首を傾げる。
どうして栞莉がここに居る?
100歩譲って、快斗なら分かる。
そう考えながら辺りに視線をめぐらせると、棚の上に置かれた着替え、薬、タオルが目に入る。
……なる程ね。
つまり、こいつは翠達に言いくるめられて、パシられたと。
『……バカな奴』
やっと状況を理解して、気持ちよさそうに眠るあいつに視線を移す。
『……何でお前が寝てるんだよ』
俺の呟いた毒に返す筈もなく、少しの沈黙の後、自然と口角が緩んでいくのを感じる。
……こいつは、不思議だ。
こいつといると、いつの間にかペースを持っていかれるし。
そもそも、俺自身を保てなくなる。
こんな奴に振り回されるなんて。
少し前なら考えつかなかったはずだ。
……こいつのおかげで、少しは退屈しなくなっている気もする。