妻に、母に、そして家族になる
「またどこかに行きましょうね。ハルも橘さんに会いたいみたいだし……それに、私も……会いたいですから」

ドキドキと早鐘を打つ胸。

緊張して言葉が喉の奥で燻って出てこない。

「……はい。じゃあ、また」

この一言で精一杯だった。

でも、信濃さんはとても嬉しそうに微笑んでくれた。

手を振って彼と眠っているハルと別れ、外灯に淡く照らされた帰り道を歩く。

歩いている間も、頭の中は彼から聞いた話しがリピートしていた。

足を止め、外灯の光が降り注ぐ道をまっすぐ見る。

ハルくんや信濃さんが今まで歩んできたのは真っ暗な道筋だった。

私にできることは少ないかもしれない。

でもこの道の外灯のように、少しでも二人が歩む道を照らしていきたいと思った。
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