妻に、母に、そして家族になる
不安は溜まる一方。

最近は胸の内から溢れて顔にまで出てしまっている。

彼に火事の事を話そうか躊躇ったけれど、最後は誰かに聞いて欲しい気持ちが勝り、重い口が動く。

「実は……住んでいたマンションが火事になったんです」

「え!?大丈夫だったの?」

心配させて申し訳なく思う。

でも、私の口は止まらない。

「私はバイトに行ってたので大丈夫だったんですけど、火元が隣の部屋だったので部屋が半焼しちゃって、住めなくなったです」

「大変だったね……。それで、今はどこに住んでるの?」

「ビジネスホテルです。早く部屋を見つけないといけないんですけど、なかなかこれと思う部屋が見つからなくて……」

家賃とか日当たりの良さとか、色々と妥協すればすぐ見つかると思うけど、高いお金を払う以上良い所に住みたい。

一人暮らしは長いけど、まだまだお嬢様生活だった頃の感覚が抜けていないことを実感する。
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