妻に、母に、そして家族になる
乗り込んだエレベーターは六階で止まり、そこから降りると廊下の突き当りのドアへと向かった。

「部屋はここだから」

信濃さんはポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込みドアを開ける。

そしたら

「フミちゃん!」

ドアが開いた瞬間、中からハルくんが飛び出してきて、勢いよく私に抱き着いてきた。

「ハルくん、今日からよろしくね」

抱き着くハルくんの頭をよしよしと撫でると、回された腕がギュ―と強くなる。

熱烈な歓迎に早くもメロメロ。

最近会えなかったから余計に愛しさを感じた。

「フミちゃんの部屋はこっちだよ」

部屋を案内してくれるのか、ハルくんがぐいぐい手を引いてくる。

チラッと彼の方を見ると

「荷物は持って行くからいって」

「あ、はい。お願いします」

二人に促され、パンプスを脱いで家に上がる。

まず最初はリビングへ。

ソファやダイニングテーブルが置いてあるリビングは綺麗に片づけられていた。
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