妻に、母に、そして家族になる
フローリングの床も塵一つなく、ワックスをした後みたいに輝いている。

「昨日お父さんと頑張って掃除したんだよ」

「ふふっ、そうなの?」

「うん。掃除する前は部屋の中がグチャグチャだったから」

「こーら、ハル」

玄関から信濃さんの声が聞こえてくる。

素直なハルくんによって、綺麗な部屋に隠された裏側を知ってしまう。

でもハルくんに悪気はない。

ただ、お父さんの手伝いを頑張ったことを褒めてほしかっただけ。

その証拠に「お父さんのお手伝いをして偉いね」って褒めてあげたら、すごく喜んだ。

込み上げる笑いを堪えながらリビングを横切り、テレビの横にあるドアまで来ると、ハルくんが開けてくれる。

ワンルームを小さくしたような部屋にはベットや小さな机が置いてあり、南側には大きな窓があって日当たり抜群だった。

「フミちゃんどう?」

「すごく素敵。ありがとうね」

部屋の中を眺めていると荷物を持って来てくれた信濃さんが隣に立つ。
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