妻に、母に、そして家族になる
「一緒に暮らし始めて、どれぐらいになるの」

「三ヶ月ぐらいかな……」

一緒に暮らし始めて間もない頃に流れていた、蒸し暑かった風は、肌を刺すような冬風へと変わっていた。

外を歩く人達の服装もガラリと変わり、コートやマフラーを身に付けている人達が多く見られるようになった。

三ヶ月も一緒に暮らしていると、二人がいる生活が当たり前のようになっていた。

最初はぎこちなかった生活にもすっかり慣れ、「ただいま」とか「お帰り」とか、一人暮しの時には言わなかった言葉が、今となっては自然に口から出てくる。

三人の生活リズムが確立しているのをひしひしと感じていた。

一緒に暮らすようになった経緯と合わせて、そのようなことをぽつりぽつりと話すと、佳奈は少し眉を顰めた。

「……それは、少し良くない傾向かもね」

「やっぱり……そう思う?」

「文香はいつかその家を出て、また一人暮らしに戻るつもりなんでしょ? 」

「……うん」

「家を出るつもりなら、早く出た方が良いよ」

「そうだよね……。そろそろ、部屋探しを再開しようとは思ってる」
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