クールな御曹司と溺愛マリアージュ
カゴを乗せたカートを佐伯さんが押して、その横を食材を選びながら歩く私。

なんなのこれ!まるで同棲しているカップル?もしくは新婚?ヤバい、有り得ない妄想が膨らんじゃう。


「なにニヤニヤしてんだ。気持ち悪いぞ」

「だって、嬉しいんです。こんな風に佐伯さんと買い物なんて、想像したこともなかったから。まるで新婚みたいで」

「……よくそんな恥ずかしいこと言えるな」

「はい。もう思ったことは全部口に出すって今決めました。こんなに幸せを感じてるのに、言わないなんて勿体無いから」


「い……いいから、早く買うぞ」

カートを押しながらスタスタと歩く佐伯さん。


「あっ、待ってくださいよ!ていうか、なんの鍋がいいですか?」

「柚原の好きな物でいい」

「ん~、普通の鍋もいいんだけど、私が好きなのはトマト鍋かな。あ、でも佐伯さんは苦手ですよね。じゃー無難に寄せ鍋とか……」

「これでいい」

私が持っていたトマト鍋の素を持ち上げた佐伯さんは、そのままカゴに入れた。


「大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ」

「それならいいんですけど。じゃー締めはやっぱりパスタですね!」

「は?馬鹿か、締めはご飯を入れてリゾットだろ」

「違いますよ!トマト鍋の締めはパスタです!」

「いや、リゾットだ」

「パスタ!」

「リゾット!」



そんなくだらないやり取りが続いたけれど、結局佐伯さんは譲らなかった。

変なところで頑固なんだよな。まぁリゾットも美味しいし、佐伯さんと一緒なら本当はなんでもいいんだけどね。





< 146 / 159 >

この作品をシェア

pagetop