クールな御曹司と溺愛マリアージュ

「あの……」

たどり着いたところは、駐車場だった。

「車をここに止めてたんだ」

「そうだったんですね」

助手席を開けてくれた佐伯さん。つまり、送ってくれるってことかな？それは嬉しいけど、でも。


車内では、ずっと無言だった。特に理由はなかったけれど、なんとなく寂しくて。

やっぱりこのまま帰るんだって思ったら、少しだけ泣きそうになってしまう。

一緒に食事をして私が奢るという約束はまた延期か、それともこれでおしまいなのかな。



しばらく走ったところで、車が止まった。

「あの、ここは……」

車が止まった場所は、スーパーの駐車場だった。

無言のまま車を降りる佐伯さん。
お手洗い？そう思ったけれど、車を降りた佐伯さんが外から助手席のドアを開けた。


「あの、私は大丈夫です」

「なにが大丈夫なんだ。一緒に買い物するぞ」

「えっ、買い物？」

気まずそうに私から視線を逸らした佐伯さん。


「まだ食事をしていないだろ。ここで買い物をして、家で食べる」


「……」


なにを言っているのか、理解するまでに少しだけ時間がかかった。


それってつまりここで買い物して、それから……。


「言っておくが、お前が作るんだぞ」

嘘、でしょ……？


「でも、でも佐伯さんは、女の人を家に入れないんじゃ」

「一度入れたら二度も三度も同じだ。それに……、女だから家に入れるんじゃない。柚原だからだ……」

そう言って私に背を向けて歩き出した佐伯さん。


火が出てしまうんじゃないかと思うくらい顔が熱くなってくるけど、でも……嬉しい！


「ありがとうございます！任せて下さい！」

「というか、お前料理できるのか？」

「できますよ！鍋くらいなら」

「不安しかないな……」