クールな御曹司と溺愛マリアージュ
驚いて動けなくなった私は、夢なのかと一瞬考えた。でも……。


「気が付いたら……俺は柚原を、好きになっていた」


「あの、私……」


強く抱きしめられた体が、自分のものではないかのように熱を帯びていく。


「正直、仕事のことしか頭になかった俺が、こんなにも本気で誰かを好きになるなんて思っていなかった。しかも相手は柚原……」

「ちょっと、それはどういう意味ですか!?」


佐伯さんの体から離れた私は、またいつものようにひと言余計だと言おうと思った。

それなのに、まっすぐ私に向けられたその瞳が、いつもと違っていたから……。


「あ、あの、私……好きです」


本当はコンペが終ってからどこかに佐伯さんを呼び出して、それで自分の今までの気持を全部伝えようって、そう思っていたけど。

こんな告白になるなんて、予想できるはずもなく。


「好きです。私、佐伯さんのことがずっと……」

「そうか。それは良かった」

「でもなんていうか、まさか佐伯さんが私を……なんて考えたこともなかったから」


「は?本気で言ってるのか?」

「だって、佐伯さんが私を好きだなんて、そういう素振り全然なかったじゃないですか」


私の言葉に溜め息をついた佐伯さん。
だって、まさか佐伯さんみたいな人が私を好きになるなんて、思うわけない。


「あのなー、俺は精一杯お前に気付かせようとしたんだ」

そう言われても、正直全然分からない。


「服装のアドバイスをしたのもお前を思ってしたことだし、苦手なトマトを食べたのもお前が好きだからだ。
一緒にいると楽しいと言っただろ?それに、柚原が昔の男と話しているのを見ただけで、内心気が気じゃなかった」


「そう、だったんですか……?」


「これで伝わってないなんて、どんだけ鈍感なんだ」


確かにそうかもしれない。でも私から言わせてみれば……。




「佐伯さんて恋愛も……不器用なんですね」





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