クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「お前にだけには言われたくない」


佐伯さんはそう言って、私の頭に手を回した。

「えっ、ちょっ、あの……」

「なんだ、まだなにか言うことがあるのか?」


ゆっくりと横に首を振った瞬間

その柔らかい唇が……優しく重なる。


私の心臓はもう、爆発してしまうそうで。

ドキドキする心を必死に落ち着かせようとしても、もう無理です。


だって、大好きな人だから。



とても長く感じられたキスは、もしかしたらほんの一瞬だったのかもしれない。

それでもきっと、私にとって忘れられない一生の宝物になる。




恥かしくて佐伯さんの綺麗な顔を見られない私は、そのまま俯いた。


「柚原……」

「はい」


私が顔を上げた瞬間、フワッと宙に浮いた体。

「わっ、佐伯さん?」


お姫様抱っこをされた私の体が、そのまま隣の部屋のベッドにそっと置かれた。

ちょっと待って、これって……。


「あの!待って下さい、鍋、鍋は……」

「火は消した。終わったら後で食べればいい」

「おっ、終わったらって、だって」

「なんだ?嫌なのか?」

「いえ、嫌とかそういうことではなく」

「じゃーなんだ」


嫌なわけない。当然緊張はするけれど、大好きな人だから嬉しい。でも……。


「佐伯さんて、そんなキャラでしたっけ?」


「キャラってなんだ。俺は俺だ」


確かに、今まで見てきた全部が佐伯さんなんだろうけど。


「いつもはクールで冷静なのに、なんていうか……」


「晴れて恋人になれたわけだし、もう我慢する必要はないだろ」



もしかして佐伯さんて……狼だったんですか?





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