クールな御曹司と溺愛マリアージュ




パソコンの画面には十二時三十分と時刻が表示されている。残りあと三十分。


あ~もう、部長もどうしてもっと引き継ぎ時間をもらえるように言わなかったのよ!
『なんせ急だから大変だろうけど、まぁ大丈夫だろ。柚原と倉永なら電話でのやり取りもできるし』なんてのん気に言ってる場合じゃないよ。

せめて一日あれば、有希乃ちゃんにもこんな迷惑かけなくて済んだのに。


「有希乃ちゃんごめんね」

「謝らないで下さい。恵梨さんが受かって私も凄く嬉しいんです」

十三時と言われてしまった為、お昼を返上して有希乃ちゃんに引き継ぎをしていた。

「引き継ぎ終わったらお昼行っていいって部長に言われたし。っていうか、言われなくても行きますけどね」

「有希乃ちゃん、ありがとね」


ワームデザインに移るにあたって、有希乃ちゃんと離れてしまうということだけが心残りだ。

けれど引き継ぎをするのが有希乃ちゃんでなければ、十三時までという無謀な提示にも頷けなかっただろう。

見た目は華やかで可愛らしくてほんわかとした雰囲気だけど、凄く真面目で仕事を覚えるのも早いし、実はこう見えて結構なんでもハッキリ言うし毒舌な部分もある。


「恵梨さん、この資料はどうやってまとめてました?」

「ああ、これはね・・・」

同じ経理課だし、有希乃ちゃんが入社してきてからずっと隣のデスクで仕事をしてきたからか、お互いの仕事内容もほぼ把握している。


「なるほど、すごく分かりやすいです」

「あとこれ、今後の為に空いた時間にマニュアルみたいなものを自分で作ってたんだ。まさかこんなに早く役に立つ時がくるとは思わなかったけど」

パソコンで作成してまとめた付箋だらけの資料を有希乃ちゃんに手渡した。


「わぁー凄いじゃないですか。ていうかこれがあれば完璧ですよ!」

大きな目を更に大きく見開いて驚いている有希乃ちゃん。そう言ってもらえるだけで作ったかいがある。




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