クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「そいつが面接を受けたとしても、俺は絶対に選ばない」
どういう意味なんだろう。私は思わず佐伯さんの顔を見つめた。
すると前を向いていた佐伯さんがチラッと私の方を見た後、持っているグラスを揺らしながら……。
「そいつと柚原、どちらかしか選べなかったとしても……俺は柚原を採用してた」
……佐伯さん。
私の話しなんて興味なさそうにしていたのに、ずっと無表情でどうでもいいって顔してたくせに。
どうしてそんな、優しいこというの……?
どうしてそんなに、私に自信をくれるんですか……?
「……あ……ありがとう、ございます」
嬉しくて、涙が出そうで、それを必死に堪えながらなんとか言葉を絞りだした。
「別にお礼を言われることじゃない。仕事ができるできない以前に、信頼できるような奴じゃなきゃ大切な仕事を一緒にする気にはなれない。ただそれだけだ」
「いえ、すごくすごく嬉しいです……。私、絶対頑張ります!ワームデザインの為なら死ぬ覚悟で頑張ります!」
私の言葉に、佐伯さんは少しだけ口角を上げて微笑んだ。
また笑顔が見られた。とても貴重な佐伯さんの笑顔。
どうしよう……。胸の奥の方が高鳴って、真っ暗だった心に突然小さな明かりが灯ったようで……ドキドキする。
「よーし!じゃー今日はとことん飲んじゃいましょうよ!ね、恵梨ちゃん」
成瀬君の大きな声でもこのドキドキは消えないけれど、私はグラスを手に持ってその気持ちを誤魔化すかのように口に運んだ。
「あー美味しい。うん、よし、飲もう!」