クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「記憶はある?」

珈琲を飲みながらサラッと言われた拓海さんの言葉に、私は首を傾げながらなんとなく遠くを見つめる。


「記憶……ですか。あるような、ないような」

「あの後恵梨ちゃん寝ちゃったから渉が送ってくれたと思うんだけど、家に連れ込まれてない?まさか襲われてないよね?」

いやいやいや!私が襲うことはあったとしても、佐伯さんが私をなんて……有り得ない!

でも拓海さんも、私が佐伯さんの家に泊めてもらったことは知らないんだ。

言ったほうがいいのかな?それとも言わない方が……。


答えに困って佐伯さんの背中を見つめると、テレパシーを感じたのか佐伯さんが立ち上がった。

それと同時に、急激に心拍数が上がる。



「泊めてないし、誰が襲うか」


そうポツリと呟いて飲み物を取りに来た佐伯さんは、それだけ言ってまたパソコンに向かってしまった。

「まーそりゃそうか」

「えっ?」

「いや悪い意味じゃなくて、俺なら恵梨ちゃんと二人きりになったら襲っちゃうかもしれないけど、渉は有り得ないなって」

拓海さんにあっさり襲っちゃうと言われたことは置いといて、佐伯さんは有り得ないってどういう意味なんだろう。


「どうして、ですか?」

「昔からあいつは家に女を入れたことがないんだ。なんか見られちゃまずいもんでも隠してんのかもね」

冗談ぽくそう言って笑った拓海さん。私はもう一度佐伯さんの背中を見つめた。

女性を家に入れたことがない?でも私が今朝目覚めた場所は……。


「お前らいつまでサボってんだ!柚原、これからお前も忙しくなるんだからさっさとこっちこい」

「はっ、はい!すみません!」


佐伯さんはどうして、泊めてないなんて嘘を……。





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