夏の日、僕は君の運命を変える






話しているうちに、文系か理系の話になる。



僕が文学部への進学を決めたことを、太田や筧さんに話すと、驚かれた。

高校の時の学年順位が書かれた紙を見せてもらうと、僕は数学が1番得意だったみたいで、1位などに名前が書かれていた。

確かに今でも僕は数学などの理系が好きだけど、文系の方が興味がある。

将来も母と同じ出版社への就職を視野に入れているほど。



僕の話を聞いていると、やっぱり不思議だ。

理系、本好きじゃない。

それなのに部屋にあったのは、小説家のサイン会のチケット。

柏ユメなんて、心ちゃんじゃないか。




『ねぇ、僕って柏ユメ好きだったの?』

『聞いたことないけど?』

『でも今の水樹は好きだよな、柏ユメ』

『じゃあ、周りに柏ユメが好きだった人いる?』



もしかしてその人にあげようとしていたのかな。

僕はチケットが入っていた白い封筒に書かれていた文字を思い出す。

僕の筆跡で、大事そうに一画一画書かれていた文字を。



『柏ユメ好きだった人…いたっけ?』

『俺の記憶にはいねぇなぁ』



チケットは1枚しか入っていなかった。

誰かにあげたのか、元々1枚だったのか。

…いや、元々は2枚あって、1枚は誰かにあげたんだ。

そうじゃないと、封筒に書かれた文字が可笑しい。



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