【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

現れた古城

「ガーラント、私たちはこれから行くところがある。留守を頼む」

 バルコニーにから戻るなりそう言い放ったキュリオ。時刻はすでに日付も変わり夜も深まっているこの時分に出かけるなど、よほどのことがあったに違いない。

「如何なされました? 御出掛けになられるのであれば儂も御供致しますぞっ!」

 ガーラントよりも早く、王の言葉に機敏に動いた女官がキュリオへ上着を差し出す。

「お前はもう休むといい。皆も私の帰りを待たずに休みなさい」

「そ、そんなっ! お待ちくださいキュリオ様っ!!」

 制止しようとするガーラントの言葉を背に受けながら、上着を手にしたキュリオはアオイを抱いたまま再びバルコニーへと向かう。
 バタバタと後を追うガーラントは次の瞬間、翼を広げて上空高く舞い上がるキュリオを視界に捉え、追いかけるのは不可能と判断し肩を落とした。

「キュリオ様……」

「ガーラント様……、キュリオ様にはきっと御役目がおありなのですわ。このあたりは<初代様>の縁の地なのでしょう?」

 背後から優しく声を掛けてきた女官に<大魔導士>は力なく頷き、まるで彗星のように尾を引くキュリオの輝きが見えなくなるまで見つめ続けている。

「…………」

(……恐らく儂らには見えないものがキュリオ様には見えておられるに違いない。
歴代の王たちが血眼になって探した創世期の悠久の手掛かりが今になって見つかるなど……ただの偶然なのじゃろうか……)

 始めは<初代王>の手掛かりが見つかるかもしれないという、かつてない大発見に心を躍らせていたガーラントだが、どうも話がうまく行き過ぎているような気がしてならない。しかし、そう思ったのも束の間……未踏の地より出土されたものは極僅かであり、大きな発見には未だ到達していないのだ。それはまるで"向こう"が創世記の悠久のことを教える意志がないようにも感じ取れる。

(創世記の謎を目にすることが許されているのは最初からキュリオ様だけだったのかもしれん……) 

 ガーラントの憶測が正しければ、創世記の悠久には大きな秘密が隠されていることになる。そして現王が核心に近づこうとしているのはキュリオの行動から明らかだった――。

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