【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
『……随分楽しそうだな』


 聖獣の森の一際巨大な樹木の幹に立つ神々しいふたつの影。
 ひとりは長い銀髪に若葉の瞳をもち、もうひとりは金髪に翡翠色の瞳を宿している。

『そう見えるかい?』

 まるで鼻歌を歌うように言葉を紡いだ銀髪の青年。彼はキュリオとよく似た容姿をしている。

『あの子(キュリオ)の目に私はそう映っているのか、とね』

『先見の力がありながら何故阻止しない? 悠久に災いを齎す者が後の世に現れるのだろう?』

 翡翠色の瞳の青年は、理解できないとばかりに眉間へ薄っすらと皺を寄せている。

『……その件は君に一任したはずだよ。それに私がこのまま王であり続けた未来は、誰かのバッドエンドに繋がってしまうのさ』

(もし私の人格を把握していたとして、キュリオの時代を選んでいたとすれば……操作しているようでされているのはこちらか……)

『悠久以外興味のない現王がなにを迷う』

『そうだね。私はキュリオと違って甘くはない。もう少し傍観させてもらうことにするよ。未来をね……』

 柔和な表情を浮かべていた先程とは打って変わった冷たい表情の青年。
 六百年ほど昔、まったく同じ場所で交わされたこの不吉な会話は現<夢幻の王>エクシスと先代<悠久の王>セシエルのものである――。
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