不機嫌なキスしか知らない



「……あ、彼氏から電話!」



突然の言葉と共に立ち上がった麗奈先輩。

そそくさと乱れた制服を直して、

「ごめんね、紘〜!また今度!」

と教室を出て行った。



私は慌てて柱の影に隠れたので、バレていないみたいだ。



「もしもし!どうしたのこんな時間に〜!」


弾んだ声で電話に出ながら、麗奈先輩は廊下を駆けて行ってしまった。

な、なんだったんだ……?

本名の彼氏がいるのに、藍沢くんと遊んでたってこと?

まあ、藍沢くんも女遊びしてるって噂だし、そういう割り切った関係なのかな。

そう思って、柱の陰から出て、もう一度だけドアについた窓を覗く。



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