不機嫌なキスしか知らない



「えっ」


予想外の光景に、思わず声が出てしまった。


藍沢くんの瞳から、綺麗なしずくが零れていたから。


……クズ男って、聞いてたのに。


藍沢くんの目から落ちた雫は、窓から差し込む光を反射してきらりと光りながら、頬をすべる。

思わず息を飲むほど綺麗で、目が離せなくなってしまった。

だからかな。思えばもうこの時から、きみの毒に侵されてたのかもしれない。




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