世界はきみに恋をしている。
_____世界が止まったんじゃないかと思った。
自分が息をする音を聞いて、ここにいるんだとわかったくらいに。
差し出されたその絵に、俺は声を発することもできなかったんだ。
ただ、ただ、その絵から、目をそらすことが出来なくて。
目を奪われるようなその絵は、心臓をぐちゃりと握りつぶすように俺を捉えて離さなかった。
散りばめられた色。原色が何層にも重ねられて、絵の具で分厚くなったそれは、幾度となくここに筆を置いたことがよくわかる。
____抽象画。そういった類のものだ。何を表しているのか俺にはわからない。だけど。
胸が苦しくなるほどの、色だ。
まるで溺れて息ができないみたいに。
ふわふわと浮かんでゆく泡のように。
何層にも重ねられたその色達が、俺の胸を締め付ける。
この絵は、胸が苦しくなる。締め付けられて、痛くて、痛くて。泣いてしまいそうなほど、痛くて。
「……これ、すごいでしょう」
カナは泣きそうな声でそう言った。でもその声の方へと顔を向けることはできなかった。ただただ、この絵を見つめることしかできない。
「……ミウが描いたの。
今からちょうど、一年前に」
カナが鼻をすすった。泣いているのがわかった。俺も、泣いてしまいそうだった。
どうしてだろうか。
この絵から伝わるものは何なのだろうか。
そしてなぜか、この絵を描いたのがミウだということに、俺は驚かなかった。だって何故か、そんな気がしていたから。