世界はきみに恋をしている。

「まあ、ゆっくり行こうな。」


タケちゃんはそれ以上何も言わず、私の頭にぽん、と手のひらを乗せた。私は笑みを浮かべたけど、心の中では、タケちゃんにごめんなさいと呟く。


「……ノガミの奴のこと、よろしく頼むよ」


社会資料室を出るとき、椅子に座ったままタケちゃんはそう笑った。まかせて、なんて笑顔で返して。そしてゆっくりと、扉を閉めた。


タケちゃんが何故、ノガミくんを連れてきたのか、今なら少しわかる。



_____目を奪うほどの原色。
彼は、かつて私が描いていた絵と、とてもよく似ている。抽象的な私の絵を、まるで形にしたものが、彼だったかのように。

だから時々、ノガミくんを見ていると胸が苦しくなるんだ。
ノガミくんのこと、もっと知りたいし、もっと仲良くなりたいって思ってる。

だけどそれ以上に。
彼に近づけば近づくほど、何かが遠のいてしまいそうな気がする。
彼を知れば知るほど、あの時みたいに、全てがなくなってしまうんじゃないかって。
そんな気がしてとても、こわいんだ。

< 44 / 50 >

この作品をシェア

pagetop