恋してバックスクリーン
中身は、上品に並んだトリュフ。まだひとつも食べていない。でも、それに添えられた小さな封筒は、開封した跡がある。

ほんの少しの罪悪感と、かなりの好奇心で、小さな封筒を開いた。

『久しぶりに会えて、うれしかった』

思わず、息を飲んだ。名前は書いていないけれど、筆跡をみると上品な女性からの手紙に思えて仕方がなかった。

あの寿彦さんが……浮気!?

スピードをあげる、胸の鼓動。なんとか落ち着かせようと、胸に手を当てた。ちょっと冷静になろう。二月から同棲を始めて、仕事のとき以外は、ほぼ一緒にいるのに……。

もしかして。バッティングセンターに行っているというのは、私の思い込みで。休みの日に、他の女性と会っているのでは!?

とりあえず、適当な服に着替える。この際、化粧とかどうでもいい。コートを羽織ると、部屋を飛び出して、近所のバッティングセンターまで全速力で駆け出した。

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