私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
藍生先輩が先頭をきって歩き出す。
「藍生先輩、早いですよ!はぐれちゃいますって!」
それを尚くんが追いかけるのを見ながら、いつの間にあんなに仲良くなったんだろうと感心する。
自由気ままな藍生先輩に付き合えるのは、面倒見のいい尚くんか、しっかりリードする瑞希先輩くらいだよね。
「ね、ねぇ椿……」
「うん?」
隣を歩いていた紗枝が、顔を赤くしながら、ソワソワしだす。それに、なんとなくピンときて、私は笑った。
「紗枝は可愛いよ、ほら…一護と話してきなって」
たぶん、紗枝は自分の浴衣をほめてくれるか、不安だったんだと思う。
誰だって、好きな人には、可愛いって言われたいもんね。