私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「だから、椿が傷ついてるのに、知らないふりしたの!!最低だよね、親友なのに……」
両手で顔を覆う紗枝に、私は「違う」と首を横に振る。
「違うんだよ、紗枝……。最低なのは……私」
「え…」
紗枝が、少しだけ顔をあげて、私を見つめる。
「紗枝が一護を好きだって言ってくれた時、本当は私も……一護が好きだった」
「あっ……そんなに前から…本当に、ごめん、ごめん椿っ」
「違うの!!本当は、あの時言えばよかったんだ。私もなんだって!」
自分を責める紗枝に、わかって欲しかった。
悪いのは紗枝じゃなくて、嘘をついた私なんだって。
「でも……言い出せなくて、何度も何度も紗枝に嘘ついた。傷つけたのは、私なんだよ、紗枝…」
「優しすぎるんだよ、椿は……でも、その優しさが、私には辛いっ」
私も……紗枝の優しさが辛いと思った。
「紗枝……ごめん、ごめん……っ」
私も、耐えられずに泣く。
その権利が、あるはずないのに、止まらない。
「ねぇ、椿は……一護くんのこと、好き?」
「……………っ」
どうしたら、紗枝は笑ってくれるんだろう。
重ねた罪が消えるんだろう。
「一護は……紗枝が好き、紗枝も一護が好き。両想いなんだよ、2人は……」
だから、私が出来るのは、最後までバレバレなこの嘘を貫く事じゃないの?
「私は……紗枝を応援する……」
「っ!!」
すると、紗枝の瞳には、何とも言えない、色んな感情が浮かんでいた。