今日も明日もそばにいて
「ん…はぁ…」

「…実季…大丈夫?」

「…うん…大丈夫。はぁ…抱きしめて…」

胸に身を預けてくる。

「はい」

はぁ、実季…愛しくて堪らない。何度でも欲しい。


「溜め息と言えば、昔、休憩室で、初めて実季と話した時、一緒に溜め息ついたんだけど、理由は内緒だって言われたよね。あの時の溜め息の訳って、なんだったか覚えてる?」

…なんで聞くかな、そんな昔の事…。勿論、忘れたりはしていない。

「覚えてる…あの日は誕生日だったの…。
…26歳になっちゃったなって。その年齢って、あの頃は結婚出来てたらいいのにって思ってた年齢だったの。…好きな人も居なかったし。当然、当日も一人だった。…結婚も無理だった。そんな事思いながら…。夕方になっても、会社では誰からもおめでとうって言われないし。あの時、今日、誕生日なの、って、神坂君に言っていたら、おめでとうくらいは言って貰えてたのかな…」

「おめでとう」

「え」

「その時の分です。おめでとうって言えなくてすみませんでした。
えー、杜咲さん、26歳の誕生日、おめでとうございます。今回は一人の誕生日だったかも知れないけど、この先、無難なところで手を打つような事はせず、…んー、気長に待っていたら、きっと10年後、くらい?いい出会いがあります。こんな感じで言ってたかも」

「10年後なんて、その時は解んなかったくせに。それに、そんな気長に待てないって、思っちゃう…」

「でも現実はどうです?今、俺がこうして居ます。まあ…今だから言える事です。俺も憧れの段階でそこまでは言い切れなかったと思います。海のものとも山のものとも…ただの新人です、言える自信がなかった。でも言っていたら有言実行していました」

「本当に?…嘘だあ」

「本当です。本当じゃないですか、今、こうしてる」

「…フ。まぁ、そうね。なんだか上手く丸め込まれた気分だけど、…嬉しいかな…」

「…実季?」

「はぁ…あの時、素直に誕生日だって、神坂君に言えば良かった…。やっぱり、どこかで少しは寂しいと思ってたのに。昔から可愛く無いね…」

「実季?」

「そうしたら、ハプニングも、もっと早かったかも知れない。ううん…。ハプニングが無くても…始まっていたかも知れない。そしたら、今よりちょっとでも綺麗だった頃に、恋愛始められていたかも知れない…はぁ」

「実季?後悔はさせません。俺も実季も、今だから始められたんです。大人になれたから…」

「神坂君…」

実季の顔を両手で包んだ。

「何を基準にモノを考えてるのか知らないけど、実季はずっと綺麗だ。凄く…可愛いよ?ずっとね…。何もかも。本当だから…」

そっと唇を重ねた。

「…ん、映画、観たいのありますか?明日、…もう今日になったのか。行きましょうか」

瞳を見つめておでこを当てた。

「ううん。いい…。こうして話している方がいい」

「実季…あ゙ーもう…。だから…折角、今ある理性を働かせたのに…」

離れて大の字になった。

「えっ?」

実季が覗き込んでいる。

「仕方ないですよ?もう…。今日も知りませんからね?」

あ…そうだった。…大変。

「はぁ。こうなる事は10年前から決まっていたんです、きっと。今夜もですが、明日も明後日も、その先もずっと、俺達は一緒ですよ?」

片方の頬に手を当てた。

「…うん。でもね、変な責任は持たないでね?駄目になったら駄目でいいから。自分の気持ちを大事に…無理はしないで。…私もできる限り一緒に居たい。だから、ずっと傍に居て?」

駄目になったりしない。駄目になんか、させませんよ。

「解ってる。実季、手を貸して?……これは…婚約指輪らしきものです。うん、こっちの指輪もピッタリだ」

あ…透明で綺麗な石…。凄く輝いてる。はぁ…。言葉は悪いけれど、今日のこの時も、神坂君に既に仕組まれていたの?

「…有難う、神坂君。ねえ?」

「ん?」

「神坂君って…やっぱり王子様?」

だって私をずっとドキドキさせる。

「えー?ハハハ、う~ん、強いて言うなら、もう、とっくに元?
実季、約束する。一生傍に居る。…居させて欲しいんだ。だから溜め息は俺だけにして欲しい。…恋煩いの溜め息はこれからはずっと俺だけに…」

あ、…。抱き寄せ唇を重ねながら反転させ、上になり腕をついた。

「キャ、駄目駄目。…見えるから、…嫌」

実季が抱き着いてきた。
…はぁぁ。どうやら溜め息は、ずっと俺がつく事になりそうだ。


−完−
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