今日も明日もそばにいて

…あれ?いつの間に…こんなモノ。

部屋に入って、珈琲を入れようと椅子に置いたバッグの取っ手に、キーホルダーのようなモノが揺れていた。
それは小さなボトルの形をしたオレンジ色の東京タワー。…可愛い。

神坂君…、よね。こんな事した人は。

指で揺らしてみた。
…ずっと揺れはしない。弾かれてちょっと動いただけ。
何度か無意識に繰り返した。

…なんだろう。本当に急に。よく解らない。迷惑をかけたお詫びにみたいにされたけど…。
狐につままれたよう、とは、こんな事?…。
…あっという間の一日だった。それも、明るい内に帰宅する、お昼間の健全な中学生みたいなデート…。
……デート?
まあ、異性だし。時間と場所を決めて会った訳だから理屈は合ってる。言葉の意味ならそう言う事だ。

…。

神坂君、どうしちゃったのかな。

…。

やけくそ?
彼女は居ないんじゃなくて、居たけど終わったばっかりで、…暇を持て余していた。理由は違っても同じように暇を持て余している年上女がここにも居る。きっと誘っても強く断る理由も無い。いい暇潰しになる。…そういう事か。…簡単な女だな私。

あ、駄目駄目。謎だらけだからと言って、想像で決めつけては。失礼じゃない。

楽しかったじゃない?今日。神坂君のお陰で。久し振りに誰かと待ち合わせて出掛けた。
それがちょっとドキドキしたりする事、思い出した。

いやいや、さっきから珈琲飲むって…、中々進んでないじゃない。
神坂君の事ばっかり考えちゃって。…本当にもう。
珈琲、珈琲。それから着替えてマッサージよ。
…。ふぅ。……。
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