今日も明日もそばにいて


「…じゃあ、ここで」

「有難う、送ってくれて」

部屋はもう直ぐのところだ。ここで解散、お疲れ様でした。
…ん。もういいのに…?…あれ?……あ。そうか。

「…珈琲、珈琲でも飲んでく?って、言った方がいい?」

こんな時、別れ際ってどうしたらいいかよく解らないから聞いてみた。

「…自然に言ってくれたのなら寄ります。でも、今のはほぼ社交辞令のようだ。
次回…。実季先輩が自然に言ってくれた時にご馳走になります」

…難しい。簡単な…単純な男では無いな…。
ただ、飲むか飲まないか、それだけの事だと思うんだけど。聞き方がまずかったからかな。……ま、いいか。そもそも人となりがまだよく解らないし。

「じゃあ、気をつけて帰ってね。まだ明るいから、逆ナンされてどっか行こうって誘われちゃうかもよ?」

「そんな事はありません。もうそういう年齢ではありません。そういう対象からしたら俺はオジサンですよ」

そうかな…。そんな事無いと思うけど。もうってことはそんな事もあったのね。どうも自分より若いと思うと…若いのよね…。

「いつでも出られるようにしておいてください、明日。じゃあ」

「え?え、ちょっと、明日って…」

あ、もう、“オジサン”のくせに足、速。

何、今の…。ハテナばかりで何も解らない。謎の誘い。謎の約束?明日の事は特に決めてなかったはずじゃ…。出られるようにって、どこか行くの?……何が起こってるんだろうね…。


取り敢えず…、足、念入りにマッサージしとかなくちゃ。いざ出掛けようにも、激痛で歩けませんってなったら、大笑いされちゃう。…あ、は、私ったら、出掛けるつもり満々?あるか無いか解らない連絡に、期待しちゃってるの?えー、それは、無いよ。……。
…何だかな〜。

あ、もう…いつまでここに居るつもりよ。部屋に帰って珈琲飲もう。結局、遥か遠くに見えなくなるまで、神坂君を見送ってた事になるのかしら。

もうあんなところに居る。…え゙っ、振り向いた。どうして?見てるって解ったのかな。
つい、ちょっと小さく手を振ってみた。あ。神坂君、周りを見て小さく振り返してきた。
フフ、あんな人混みでブンブン振ったら、目立って恥ずかしいよね。
あ、信号が変わった。
もう一度小さく手を振って帰って行った。何だろう。何だ?この感じ。ザワザワする…。
あ、珈琲よ!そうよ。飲もうと思ってたのに、まだ飲んでないから、落ち着かないんだよ。
部屋に帰って飲もうっと、…。
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