今日も明日もそばにいて

「あ、ごめん、あっちに座ってて?珈琲は、勿論アイスよね?」

後ろに立ったままだったから声をかけた。上手く誘導することに慣れてないから。ごめんね。

「…あ、はい。有難うございます…」

ソファーに腰を下ろしながら、遠目に見えた。
珈琲の準備をする為、キッチンの二人用テーブルに置かれたコンビニの袋と財布。
あれが付いていた。

「神坂君〜。甘いものは好き〜?と言っても選択肢は二つなんだけど」

「俺は珈琲だけで充分です。遠慮では無いです。実季先輩が自分の為に買って来たんですから、両方食べたいでしょ?」

「でも、私だけっていうのも…うわっ」

すぐ後ろに来ていた。…っ、はぁぁ…びっくりしたぁ…。

…。

「は、はい、どうぞ」

珈琲のグラスを押し付けるように手渡した。

「どうも」

カランカラン…。氷の音がよく通った。

「鋭いわね。どっちか決めきれなくて二つ共買ったの。神坂君はスイーツ、嫌い?」

だったかな…胡麻団子はあんまりって言ってたけど。コンビニの袋ごと持ち、カップを手に移動した。

「嫌いって程じゃ無いですが、好きか嫌いかなら、食べなくていいかなって感じです」

好きではないってことでいいのかな?

「じゃあ、私、遠慮無く食べるわよ?」

「はい、どうぞ」

リビングのソファーに腰掛けた。

気持ちゆったり目の二人掛けを買っていて良かったと思った。いきなり余裕無く密着して座るのも困るし。誰かと座るなんて想定して買ってもいなかったし。

「あの、神坂君、今日…」

「あ、はい。夕方くらいから出掛けようかと、電話して誘おうとしたんですが…」

結果、こうなったのね…申し訳ない。ちょっと前の事から、今に至ってるのよね。私が携帯、置いて出てたから。

「そうよね。私が電話に出なくて、だから、今、神坂君がここに居るって事になっちゃってるのよね?」

「はい」

…。んー、なんだかこれは。私は謝るべき。よね?

「ごめんね」

「いや、謝らなくて大丈夫。元々全部が俺の一方的な事から始まった事だから」

「んー…でもね」

「一方的な事だけど、誘いに来たんです。実季先輩は言った事、守ってくれる人だから。連絡するって言ってあったら、きっと一日中、気に掛けてくれているはずだと」

確かに。出掛けられる格好はしている。
…いつでも大丈夫なように。片付けながらも、メイクはしていた。何気に電話も気にしていた。
なのに、ちょっとコンビニにって時は…肝心な物を持ち忘れた…。ごめんなさいね。

「それで、行きませんか?」

「え」

「プラネタリウム、どうですか?こうなったら、余計、誘わないなんて無いでしょ?すぐにでは無いです。時間はもう少し後で…行くつもりでした。でも先輩、連絡が取れないから。だから、取り敢えず、部屋には居るのかと…俺の誘いが嫌で、電話に出ないって事ならまだいいんですけど。何かマズイ事になってたらと思ったら、気が気じゃなくなってここに来てました。だから、実際行きたい時間はもっと後だったんです」

「…こ、神坂君」

何だか、話に勢いがあり過ぎて迫られてる?みたい。身を心配してくれたって事かな。実際、隣で話しながら、いつの間にか両肩を掴まれていた。

「あっ、すみません」

肩から手が退けられた。

「だ、大丈夫だから」

…。んー、何だかな〜。

「何時から行くつもりだったの?」
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